「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.649~ヘンリー・スレッギル~】
パソコンに向かって原稿書きなどをして疲れると、時々ユーチューブでジャズプレーヤーやサルサのライブ画面を探すことがある。まあ色々なライブが見れて、これならばわざわざアルバムなどを買うこともないじゃないか...等と思うこともある。まあこうした動画は往々にして、プレーヤー達の権利を無視して、勝手にアップこともあるようで「権利者の申し立てにより削除...」等と言う注釈付きで、画面が消されていることもあるが、まあこのユーチューブ画面を見ながら探しているだけで、一日が終わってしまう...等と言うことも少なくない。
そんなジャズ関連の中で、ぼくが最も印象に残っているものの1編が、前衛派のサックス奏者&作編曲者のヘンリー・スレッギル、彼のドイツでのライブ映像である。この映像は10年ほど前に偶然見つけ、そのエネルギッシュで享楽的な演奏に本当に圧倒されてしまった。と言ってもここで彼はサックスを吹く訳ではなく、自身の書いた曲を指揮者として、臨時編成の大型アンサンブルを使ってリードをしているのだが、その大型アンサンブルの演奏が凄い~凄まじい興奮ものなのである。ユーチューブを見て目覚めさせてくれた圧巻の演奏画面、年に一度は想い出して見ていたのだが、数年前に突如として見られなくなってしまった...。と言うよりも探し出せなくなってしまったのだ。チャンジー(爺さん)の悲しさで、パソコン関連は一度トラブルともうどうすることもできない。画面が消されてしまったものとして半ばあきらめていたのだが、先日スレッギルの資料を調べる用件がありついでにユーチューブも見たならば、これがなんと見つかったのである。驚いたし実に嬉しかった。
この映像よく見ると1988年にドイツのハンブルグで行われたジャズフェスでのライブ映像で、前に見た時は途中でフェイドアウトされ残念な想いだったのだが、これには続きがあり全部で1時間を超えるライブ映像になっており、今回その全てを味わうことが出来て中々に感激だった。とここまで書いて来て肝心の主役、ヘンリー・スレッギルに殆ど言及していないことに気づいた。申し訳なしです。
このコラムの読者の方で彼の事を知る方はほとんどいないかと思われるが...実は日本でこそ無名だが本場のアメリカではあの最も権威あるピューリッツアー賞を、2016年にジャズ関連では3人目として受賞しており、各方面から高く評価される「ジャズを書き換え続ける哲人」とも評されるほどの大物なのである。シカゴ生まれでぼくと同年齢。一般には取つきにくい前衛派の一人と目されているのだが、決してそんなことも無くワールドミュージックにもクラシックにも通じた奥行きの深い人。ぼくのフェイバリット・ミュージシャンの一人で、ぼくのジャズ経歴の中には好きなミュージシャンとして、いつもかれの名前が挙がっている程。
まあざっとこんなところがスレッギルの紹介文だが、この現代のジャズ英雄の一人のライブの面白さは、ジャズをベースに現代音楽、そしてファンクミュージック、更にはぼくの大好きなラテンジャズが混然一体化した、酒池肉林とも言うべき混沌&越境の圧巻のジャズポップ&ダンスミュージックなのである。デューク・エリントンもマイルス・デイビスもなしえなかった、ピューリッツアー賞受賞を実現したこの偉才の素晴らしき興奮音楽。皆様も是非ユーチューブで探し出し、堪能し尽くして欲しいものです。
【今週の番組ゲスト:NY在住のジャズピアニスト クニ 三上さん】
新譜「明るい表通りでーOn the Sunny Side of the Streetー」から
M2「Waltz For Debby」