「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.702~本屋が消える】
今、日本各地の街々から本屋が消えつつあると言う。細かい統計数字などはしかとはしないが、本屋全盛時に比べると半減以下になっているのは間違いないだろうし、ある書店チェーンなども10数年前には全国で数十店あったが、今では本店のみ...に迄縮小してしまっているとも聞く。こうした書籍文化受難の時代、まず若い連中だけでなく全ての世代で本を読まなくなっているのは間違いない。そのうえ本を買うのも本屋に行ってさてどれを...等と、選んで買うことももう無い。アマゾンなどに頼めば読みたいものが一発で手元に届くことになっている。時代の変遷と言ってしまえばそれまでだが「文化などと言ったものは少しも飯の種に...」等と言った、効率第一主義の若い連中の嘲笑の声すら聞こえて来る。本当に寂しく嫌な時代になってしまったものだ。
「だが10年ひと昔...」と言った言い方に倣えば、本屋のあった一昔前の時代...と言うことになるのだろうが、その頃迄は人口がそれなりの市・町には少なくとも1軒から2軒の本屋はあったはずで、そうした本屋には怖い...と言うか、貫禄ある店番の親父さんやおばさんがいて、こちらの希望なども聞いてくれたりして、本屋はそれぞれの街のある文化的シンボルでもあった。その代表格があの椎名誠が作家として知られることになった代表作「国分寺の(本屋の)オババ」の主役でもある、店番のオババなのだろうが、今ではそれぞれの街を象徴するそんな本屋、もう全国どこにも殆ど見当らなくなってしまった。寂しいことだ。
日本と言う国の衰退・凋落が至る所で声高に叫ばれている。これには日本の急激な人口減少も大きく関わっているが、ただ日本人はこんな論議になっても、かつてのジャパンアズno1時代の意識が未だに残っていて、欧米諸国には少し劣っていても、アジア諸国の中では依然no1だと思っているフシもある。しかしこの本屋消滅~書籍文化衰退のニュースにも見られるとおり、こうした現象はぼくの少しばかり知る台湾などでは余り感じられず、結構どんな小さな街でも本屋は見かけられるのだ。似たような状況は、タイでもインドネシアでもあるのでは...と思われる。経済・政治面などではいささか元気のない日本も、こと文化の面ではかなりな程度に日本が...などと、能天気に思っているとその実態は相当にうすら寒いものであることが、この本屋衰退問題からも透けて見えて来る気もする。
しかしこと本屋について言えば、面白いことにまた逆の現象も起こりつつある。文庫本から週刊誌、果ては専門書まで何でもあると言った総合型の本屋は街に減少しているが、個性派の書店(それを果たして書店と呼べるかも分からないような...本屋)はかえって増えている感もある。街に一軒も本屋がない...と言った状況をひどく憂いている人達(特に若い世代だろうが...)の努力で、セレクトショップや喫茶店と併設等々...と言った、これまでとは形式こそ違うが新手の本屋が、徐々に復活しつつあるのも、また事実でもある。学園都市などを謳い文句にしている我が街=國立の街でも、カフェをやりながらあるいはブティックの一部で新刊や古本を置湯監視いている、新手の本屋が徐々にだが増えている感もあり、これは結構日本の各地でも見られる現象なのかもしれない。確かに心強い限りだが、果たしてこうした動きが定着していくのか...、それには個々人がそうした動きをフォロ―し、バックアップしていく必要があるのは、言うまでもないだろう。まあそれにしても全国の本屋さんや新手のブックショップの皆さん...、是非いつまでも書籍文化継承の為に頑張って欲しいものです。
【今週の番組ゲスト:10月24日創刊のジャズ専門誌『Jaz.in』の編集長 佐藤俊太郎さん】
M1「Bourbon Street Parade / James Andrews,Troy Andrews」(『12 & Shortey』より)
M2「Door Poppin' / John Boutté」(『Good Neighbor』より)
M3「My Foolish Heart / Brian Bromberg」(『LAFARO』より)
M4「Time Remembered /柳真也」(『Secret Corner』より)