「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.675~我が愛する街】
日本と言う国自身は、今経済や政治など全体にパッとしない状況が続いており、将来展望も決して明るくは無いと思えるのだが、渋谷や新宿、丸の内、そして品川などと言った東京の主要拠点での変わり様には目を見張るものがある。新宿や渋谷これ等の街は、未だジャズ全盛の頃には「木馬」「ダグ」「ピット・イン」等々、数多くのジャズ喫茶(カフェ)、ジャズバー等が存在し、若かりしぼく等も連夜のようにそこらで遊び惚けていたのだが、今やこれらの街は大幅にその街並みを変えてしまい、渋谷などはJRの山手線から他の私鉄に乗り換えるのすら、いささか戸惑う程になってしまった。
政治・経済の沈滞化と脆弱化に反比例する、こうした東京の繁華街のダイナミックな変貌、これは大いに興味ある所だが今のぼくにはとてもその変化についていけない。となるとお前の好きな街は...と言うことになるのだが、やはり生まれ育った中央線の街々、高円寺、吉祥寺、西荻窪等と言うことになるだろう。これらの街はぼくの子供の頃に比べいささか様相こそ異なっているが、レトロチックと言うかアナログ感覚が残っていて今でもホッと寛げる街でもある。まあ今住んでいる国立もその寛ぎの街の一つであるのは間違いない。
そしてもう一つぼくの好きな街、それが学生街からオフィス街へと変化しつつも昔の古き良き古書街が残り、今や風前の灯とも言える昭和文化(カルチャー)の残り香が色濃く漂う、神保町と言う街である。この街も広い意味ではJR中央線の街並みの一つに組み込まれるかも知れないがやはりその感覚は一寸異なる。昔と違い今はすぐに疲れてしまう身...などと言うこともあり、余り街歩きなどしなくなってしまったが、この街では様々な古書店をメインに、レコード屋・画廊・カフェ・レストラン・山道具屋等々、興味深い店が並んでおり、それらを覗き味わうことでかなり気分も落ち着き飽きも来ることが無い。嬉しい街なのである。そんな中でもぼくのお気に入りは、スマトラ・カレー屋「共栄堂」と焼酎飲みの名店「兵六」、そしてジャズカフェ「アデュロン・ダック」と言うことになる。どれも通えば通う程に味わい深くなる...と言った感じで、正にぼくの愛着の店なのである。特に良く通うのが以前にもこのコラムでも紹介した「アデュロン・ダック」の3店。NY郊外の有名公園の名前を取ったアデュロン・ダックは神保町の路地裏のビルの5階にあり、ここで人と待ち合わせをしても初めての人は辿り着けない...と言った、隠れ家的な店なのだが、NY在住歴も長いマスター夫妻~滝沢夫妻の何とも言えない人柄の良さ、NYダウンタウンの老舗バーの素敵な雰囲気など、人に紹介すると殆んどの人がこの場所の心地良さに惹かれ、熱心なリピーターになる...実にアットホームな隠れ名店なのである。その上ママが作る料理も絶品、言うこと無しである。
毎週火曜と水曜の夜はライブを実施、最近はライブの名店としても徐々に知られるようになって来た。ぼくも医師でシンガーの海原純子、日本のトップテナーマン川嶋哲郎、我が盟友のチンさんこと鈴木良雄等々、色々なミュージシャンやシンガーをこの店に紹介、ライブを実施したりもしているが、彼ら彼女らからも滝沢夫妻は信頼厚い。まあこの隠れ名店が何時までも静かに続いて愉しませてくれることを、ぼくは神保町と言う大好きな街と共に切望しているのです。
【今週の番組ゲスト:ジャズサックスプレイヤーの後藤輝夫さん】
M1「But Beautiful」(『But Beautiful』より)
M2「Hello Like Before」(『GO TO』より)
M3「KATHMANDU MOON」(『KATHMANDU MOON』より)
M4「Friend Ship / B-EDGE」(『Lovin' Don't Stop』より)