「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(10月より再放送がなくなり、本放送のみとなります)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.697~唄者・大野えり】
今週の「テイスト・オブ・ジャズ」は、シンガーの大野えりを久々にゲストに迎えた。日本にジャズシンガーと名の付く人はかなりいる筈だが、恐らくその中で最高の存在とぼくが信じている歌い手、それが大野えりなのである。そのえりさんが「itoyoNeri(イトヨネリ)」という不思議な名称の3人組ユニットで、わずか2曲のみ収録のアルバム(ある種のミニアルバム)を発表...と言う情報が伝わってきた。これは何を置いてもゲストとしてスタジオに遊びに来てもらわないと...と言うことで連絡を取ると、快くOKしてくれ単身で飄々とスタジオに遊びに来てくれた。
国内有数の唄の島=奄美大島、そこでは心を揺さぶる真の歌い手を唄者(うたじゃ)と言う名称で呼ぶようだが、当然この称号に値する人はほとんどいない。一方ことJ-ジャズボーカルの世界でこの唄者に価する数少ない人、それが大野えりだとぼくは信じている。そして実際に彼女のあるアルバムのレビューを担当した時にも、このジャズ唄者...と言う形容句を使いアルバムを高く評価したものだった。
ところで彼女の新作の不思議なユニット名、これは何と板橋文夫(p)米木康志(b)そして大野えりのユニット3人の名前を繋ぎ合わせたもの。鹿児島に演奏旅行にいった折、そこのジャズ喫茶のマスターから提唱され、それがそのままユニット名になったものだと言う。そしてこのユニットは鬼才ピアニストにして、ジャズ界きっての名作曲家でもある板橋文夫、彼の銘品のみを取り上げるのだとも聞く。そしてこのユニットの初アルバム、それは2曲のみの収録。そうなれば必然的に「渡良瀬」と「グッドバイ」と言う、ファンからの人気も高い板橋不朽の銘品と言うことになる。「渡良瀬」の方は栃木県出身の板橋が、郷里の川、渡良瀬川をモチーフに作り上げたもので、今回初めて知ったのだが、歌詞を書いたのはぼくのクラブ後輩にして男性ボーカルのトップ、丸山繁雄くん(彼自身では未収録)だと言う。歌詞付きのこの唄のレコーディングは多分初めての筈である。そしてもう1曲、ぼくが彼の作品の中で最も好きなナンバーの一つ、哀愁の極みとも言えそうな「グッドバイ」。これはえりさん自身が詞を付けており、素晴らしい歌唱と素敵な歌詞...、もう言うことのない究極の1曲に仕上がっている。
スタジオでは終始にこやかに山本アナとも話が弾み、実に会話も巧みで興味深い。新作の2曲だけでは番組上少し間が持たないので、これまでのアルバムも2枚持参してもらいそこから2曲を掛けたが、それも素晴らしいもの。改めてこのジャズ唄者、大野えりの凄さに痛く感じ入ってしまった。この11月末には新作のデューク・エリントン集を出すのだが、残念なことにまだ音源が上がっていないのだと言う。彼女が歌うエリントン集、多くのシンガーが取り上げているが、えり流のそれには期待大である。またそのアルバムを引っ提げてスタジオに...と頼むと、喜んで...と快く返事してくれた。愉しみがまた一つ増えた。
【今週の番組ゲスト:ジャズシンガー 大野えりさん】
M1「Watarase / itayoN'eri」
M2「The Best Is Yet To Come」(『LIVE AT PIT INN Lotus Blossom』より)
M3「Goodbye / itayoN'eri」
M4「Sweet Love」(『Sweet Love』より)